
the killersは私にとって大切なお気に入りバンドの一つ。
きっかけは2004年リリースされたアルバム「Hot Fuss」からのリードシングル「Mr. Brightside」を聴いた時から。
印象的なギターのイントロに間奏ではシンセが響き、ひたすらキャッチーなメロディがやたらカッコよく聴こえて、聴くたびに体を動かすどころかジャンプしたい衝動を抑えるのが大変な名曲。
先にイギリスで人気になった印象ですが、この曲はこの年の全米チャートでも長い間上位にいた大人気曲で、私も初めて聴いた時から私の大好きが止まらない(笑)
もちろんアルバムもすぐに手に入れ、一瞬でバンドの虜になりました。
このバンドのやはり最大の魅力はボーカル、ブランドン・フラワーズの存在。
もともとキャッチーでポップかつグラマー感のある曲作りに加え、彼の歌や姿からは昨今のバンドのボーカルの中でも格段に陽な印象で、聴くだけで元気をくれる。生きる力をくれる。
高揚感溢れる歌声にカリスマ性溢れる姿の魅力はもちろんですが、シリアスだったり重い印象のバンドは多いものの、聴いていて笑顔になれたり、生命力を感じさせてくれるバンドボーカルは意外と貴重。特にスタジアム級のバンドで私がパッと浮かぶのはフー・ファイターズのデイヴとブランドンぐらいです。
しかし、ここ数年はもちろん従来の人気はあるもののリリースされた作品は最高とは言い難い出来で、ファンとしては少し心配でした。
メンバーの活動休止があったりでバンド自体のコンディションは良くなさそうに見えて。2017年にリリースされたアルバム「Wonderful Wonderful」はいい曲と微妙な曲の差が激しく、トータルとしては不安が残る内容でセールスも一時期の人気に比べれば良くない印象でした。
フェスやライブではサポートメンバーを迎えてこなしていたし、日本にも来日してくれた時のライブはとても素晴らしかったです。もともとthe killersは日本での売り方が信じられないほど上手くいかなかったバンドで、数々の来日ドタキャンや海外と日本での人気の差はファンの間ではもうネタ化してたと言ってもいいほど。
日本のロックファンにも一聴してもらえれば絶対絶大な人気バンドになるはずの音なのに、ファンとして歯痒い状態がもう10年以上続いてしまいました。
「このまま人気が回復しないままバンドがなくなったらどうしよう」と思いながら待つこと数年。今年待望の新アルバムがリリースされました。
それが「Imploding the Mirage」です。
https://open.spotify.com/album/1uROBP2G4MP0O4w1v5Cpbg?si=gwBH3OCWQDqyKpbtnyp2eQ
今年はコロナのおかげで人々の生活が激変した年。the killersのこの新譜も当初のリリース予定から数ヶ月遅れで発表。
数曲の先行リリースがあり、その曲どれもがいい感触だったのですが、やはりアルバム全体を聴くまでは「大丈夫かな?」とちょっと思ってました。
そしてアルバムを聴き始めて、聴き終わり。
私は泣いてました。
完全に予想を超えた素晴らしい内容のアルバムでした。
これまでのthe killersは人間賛歌的な名曲もありますが、やはり出身であるラスベガスの煌びやかなイメージも引きずっていたし、前アルバムがどっちつかずな印象ではっきりしない感じでしたが、このアルバムでははっきりとラスベガス時代を終わらせるような印象を打ち出してきました。
そして彼らが目指したのは、広大な大地が似合うスケール感溢れるロックサウンド。もともと見せてきた懐の大きさと疾走感溢れる曲を思いっきり鳴らすことで「新しい時代をしっかり歩いていこう」というような力強い曲の数々に心を鷲掴みにされました。
先行で聴いていた「Dying Breed」「Caution」などがアルバムのピースでハマると1曲1曲バラバラで聴いていた時よりも魅力が数百倍にも増してきます。
アルバムとしてしっかりと聴かせることもかなり意識した作りで、全く無理のない構成で一度も引っかかることなく、聴き進めれば進めるほど魅力が増すアルバムになっていて、あっという間に聴き終わりました。
客演も魅力的で女性アーティストを選択。「My God」でのワイズ・ブラッドとは従来のブランドンのボーカルに神聖な雰囲気をもたらすコーラスがぴったりだし、「Lightning Fields」ではk.d.ラングの声が力強さに優しさを加えていて歌に深みが増しています。
ラストはアルバムのタイトル曲「Imploding The Mirrage」。ラストがタイトル曲というだけでなにかこの作品への自信というか言いたいことが伝わってくるような。そのメッセージはブランドンが「一緒に前を向こう。前を歩こう。」と背中を押してくれるようです。
コロナやBLMなどで変わってしまったように感じていた世界で、the killersからこんな力強い作品を聴けたこと。胸がいっぱいになりました。みんな、こんなthe killersを待っていたんです。
メディアやファンの評価も軒並み高く、中でも日本の従来のファンのみならず今までthe killersをちゃんと聴いたことがないロックファンがTwitterなどでいい反応を見せてくれた事もとても嬉しくて、リリースされた日の朝から感極まりました(笑)日本の人気拡大では上手くいってない印象でしたが、これからは変わりそう。
やっぱり作品に力があればいつかは必ずファンはついてくるし、このままこの作品の人気から「日本のフェスのトリも見えてくるかな」と思いました。そここそ本当に相応しいバンドなので。
ブランドン個人の体験(バンドの微妙な状態、奥さんのうつによる移住)が生んだ、「困難な状況に負けずに走っていこう」という誰が聴いても分かりやすい力みなぎる良曲が目白押しなので、もちろん全人類に勧めたいですが、特に今元気やエネルギーが欲しい人、「しんどいな」と思ってる人に聴いてみてほしい。今まで「キラーズって日本と縁ないな」って思ってるロックファンの人もぜひ。縁は呼ぶもの。まずは聴いてみてもらえたらと思います。
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