BTS「ARIRANG」は傑作?活動休止後に見せた”限界突破”の真価を徹底考察!

BTS「ARIRANG」アルバムカバーの写真

BTSの休止期間を経て発表されたアルバム「ARIRANG」は、まさに「限界への挑戦」という言葉すら軽く超えるような、極限まで研ぎ澄まされた音と表現に満ちたアルバムに。

フルアルバムとしては約6年ぶりのリリースとなった本作は、これまでの活動、休止、そして再開という流れの中での葛藤や成長、そして自分たちの限界に挑む、周りにどう思われてもいいという強い意志を感じさせるアルバムとなっています。

同時期にリリースされたハリー・スタイルズと同じくファンや音楽好きの間で賛否両論を呼んでいるこのアルバムですが、その内容は少し違うもよう。

この記事ではこのアルバムの内容や音楽性、その魅力とそして評価について迫っていきます!

アルバムのSpotifyリンクはこちら

BTS「ARIRANG」休止の理由と再開後初のリリースについて

前作のフルアルバム「MAP OF THE SOUL : 7」から数えると約6年。K-POPはリリースサイクルがかなり短く、1年以上空くと「結構空いたな」とすら感じてしまうところを6年も空いた理由は、日本でもよくニュースになっていた韓国の徴兵制度における全メンバーの兵役期間があったため。

K-POPの男性グループには避けて通れないこの制度。世界的人気で音楽業界史上における数々の記録を作ってきた彼らでも、それは例外ではありませんでした。

昨年にはメンバー全員の兵役が終了し、すぐにリリースがあるかと思いきや、今年の3月までBTSとしてのリリースは無し。

このアルバムは事前のシングルもなく、リークもない状態でリリースされました。

BTSのファンであるARMYはもちろん、音楽ファンもどんな作品をリリースしてくるか、楽しみにしていたと思います。もちろん、私もその一人です。

楽しみにして3月20日の夜に聴き始めました♪

「ARIRANG」アルバムスタートから一気に畳みかけるヒップホップ・クラブサウンド5曲の攻撃性にびっくり!

1曲目は「Body to Body」。ノリのいいサウンドでラップから始まる曲ですが、最初からテンションがめちゃめちゃ高い!そして驚いたのは歌の声の処理と音圧。もともとK-POPは音圧高めのジャンルですが、さらに圧を強めてきたような感覚と、メンバーの声の聴こえ方が低音と同じくらいフラットに聴こえること。でもどこか歪んでいて、「キレイに響く」というより、力で押されるような印象でした。

この曲は「ARIRANG」というアルバムタイトルとつながるような、韓国の民謡を取り入れたパートもあるのですが、「愛を持って」というよりどこか突き放したようにも聴こえるような、この挿入も「力」を重視したような使い方に感じ。民謡とかその国ならではの歌には、良くも悪くも独特のパワーがありますが、それを加えたような。「この曲、ライブのオープニングにもピッタリだな」と思っていたら、Netflixでライブ配信されたカムバックライブでも1曲目に披露されていました。

と、1曲目が「パワフルだったま」と思ったんですけど、2曲目がさらに攻撃的な曲でびっくりしてしまいました!「Hooligan」というタイトルからもあるとおり、この曲はヒップホップのラップが強めの曲なので、テンポこそそこまで早くないミドルな感じの曲ですが、ストリングスから入る流麗な曲かと思いきや、ナイフをこすり合わせたような金属音から低音を効かせた重めのサウンドがかなり強くて、サビのストリングスと歌の箇所すら攻撃的に感じるかなり攻めた曲。

3曲目の「Aliens」では金属音にかわり銃弾を放ったような音がフックになるこれまた強めのヒップホップ曲。しかもサビの歌パートの声がかなり加工されていて、ズタズタというか誰が歌っているかもあまり分からなくなるほど。こちらもキレイにとか、曲をカッコよくしようとするレベルを超えて、抑圧された状態やうっぷんを晴らすかのような表現に聴こえます。

4曲目の「FYA」はクラブを意識したかのようなアップビートのダンス曲。でも一聴では彼らの揃った振り付け有のダンスというより、本当にクラブで自由に踊ってすべてを振り切るかのようなエネルギーに満ちた曲。「Everything lit, it’s fire」とサビパートでラップが響きますが低めの声で、歌詞との相反が魅力ある曲です。

と思ったら「FYA」から途切れなく5曲目の「2.0」へ。低音うごめくトラックと、こちらもポイントポイントで声の重ね方が面白いヒップホップ曲。少し投げやりにも聴こえるようなラップと感情を極力抑えたかのような歌パートがゾンビかような怪物かのような、歌詞の強さとの面白い効果が出ている1曲。

と、ヒップホップ曲とクラブ曲のようなかなり強烈かつ、今までのBTSのイメージからさらに強烈さを増したビートや局長に、音の加工やアレンジを加えた強さ全開の曲が5曲も立て続けに鳴らされて、ここまでで本当にドキドキしました!こんな刺激的な展開とは!

いきなり鐘の音から歌の比重が上がる後半へ オルタナロックからサイケまで!

そして驚いたのが6曲目にクレジットされている「No. 29」は鐘の音!本当に鐘のみです!!(笑)

これは韓国の国宝とされている鐘の音だそうです。これが結構長くて、最初に聴いた時から未だに慣れないくらいの唐突さでびっくりでした!!

6曲目の「Swim」からはそれまで強烈だったラップ曲から、歌がメインの方向に少しずつ変わっていきます。この曲がシングル的役割の曲のようで、MVも公開されていました。この曲は今までのBTSのイメージともつながりやすい、ミドルテンポの切なさが光るバラードのような曲ですね。

7曲目の「Merry Go Round」は、音楽好き的にはあのTame Impalaのケヴィン・パーカーがクリエイティブに入った曲。Tame Impalaは現代のサイケデリックロックの人気バンドで、ケヴィンも人気のデュア・リパのアルバムをPDしたりと他のアーティストのPDは珍しくありませんが、BTSとの掛け合わせが面白い1曲。彼のアレンジは一聴して「Tame Impala」と分かる特徴的なサイケアレンジと曲調で、あんまり個性がないアーティストだとアレンジに負けてつまらない曲にもなってしまいやすいですが、BTSはむしろそのメンバー全員揃った時のパワーとうまさで、むしろ一枚上手感すら感じさせていますね。

8曲目は「NORMAL」。この曲もBTSの新しさを感じる1曲で、歪ませたギターとシンセパーカッションが印象的なオルタナロック曲。今まで聴いたBTSの曲からはあんまり感じた事のない感触で、個人的にとても新鮮でした!ここでもバックのアレンジの歪みが面白いところにシンプルなメロディが響く曲で、ボーカルが重要な曲です。

と思ったら次の「Like Animals」はさらにロック調が強まった曲になっていて、ポップさは薄く、曲調も暗め。またここでもボーカル全体がかなり加工されています。オートチューンと言えばそうなのですが、効果的に使われていて、悲しみの苦しみのような部分を表現するにピッタリだと思いました。

新たな境地を感じさせるボーカル曲をラストに並べて緊張感を保つ

「they don’t know ‘bout us」はこのアルバム内で1番ボーカルの入れ替わりが激しい曲ではないかと。ここも加工はされているものの、歌い方そのものすら変えているようなフレーズもあり、歌われていること自体がかなり暗い曲でびっくりしました。もともとBTSはシリアスな曲も多いグループですけど、正直な心境を出しているような印象で、「あいつらは俺たちのことを何もわかっていない」という、凄く投げやりにも聴こえる曲。このアルバム自体、とても深いところのダークさにも満ちているアルバムでそれを象徴する曲に感じました。そして、ボーカルアレンジが見事なK-POPなではの1曲にも感じます。

前曲と一転して軽さとシャレたクラブサウンドを感じさせる「One More Night」に、ファルセットボーカルが甘い響きの「Please」を挟んで

ラストの曲「Into the Sun」もオルタナティブロックのバラードで〆てきました。この曲がボーカル加工の最高潮で、音源ではほとんど誰が歌っているか、私は一聴では分からなかったです。生音のバンドアレンジはかなり今のインディーロックに通じるような感覚で、こんなに本格的なインディロック曲を出してくるとは思ってなかったので、最後まで驚きに満ちたアルバムでした。

音・ラップ・歌 全てのクオリティを極限まであげてきた正攻法なサウンド作り

このアルバムを聴いて、新しいサウンド面を多方に散りばめながらも、音の作り方や、ラップ、歌。そのすべてのクオリティを私は上げてきたと感じました!

特に個人的に面白いなと思ったのは、曲のポイントポイントで使われていたボイス加工。先にも書きましたが、「ただ曲をカッコよく、今っぽくするために使っている」というレベルを超えて、曲によってはもはや誰が歌っているかさえ分からない、BTSやK-POPの肝の一つである、ボーカルの声色の入れ替わりの快感を敢えて消そうとまでして、何かを表現しようとしているように聴こえました。その代わり、声の出し方の癖や個性は残ります。その方向で表現したかったものはなにか。それはキレイなものというより、「強さ」や「刺激」そして「闇」みたいなところかな、と解釈しました。決して明るい作品ではないですね。キレイに聴かせることは極力選択せずに、自分たちの現状を表現したかったのかな、と。

そんな新しさも感じさせつつ、曲調は前半はBTSの真骨頂のヒップホップを最大限に表現した曲を配して、どの曲も刺激しかないような、聴き手を全く休ませてくれない、サウンドもボーカルも強さを感じる内容に。

後半は歌の比率を上げながら、これまでよりさらに多くのジャンル、それもポップというよりは挑むような形の曲で、オルタナ系やインディ感があるロック曲なども。どの曲もそれが上手くハマっていて、無駄な曲が1曲もなく、勢いを全く衰えさせることないまま14曲、41分のアルバムは終わります。

自分たちのスタイルももちろんですが、それを維持するよりも極限まで可能性を伸ばしてきたアルバムで、最初聴いた時は本当に「圧倒された」という言葉がピッタリの状態でした!

「ARIRANG」を聴いて思いうかんだ作品は?共通性と様々な受け取られ方

これは個人的な勝手な意見ですが、私がこの「ARIRANG」を聴いて、「この感覚、同じように受けたな」と感じたアルバムが、Chari XCXの「Brat」。例えばBad Bunnyなどと共通している点を挙げている方もいらっしゃったのですが、私はそこは一頃前のBTSのように感じました。

なんとなくですが、アルバムの雰囲気はこの「Brat」をお手本の一つにしているかもしれない、と。もちろん、マネしているということなどではなく、作品全体が攻撃性に満ちているところや、自分の得意なスタイルを極限まで引き上げるようなところ、作品に対する態度や試しているところ。共通性がじぶんのなかであって。畳みかける早さなんかも。

また、RMのソロ作から続く、Tyler, The Creatorなどの影響もあるのかな、と。Tylerだけに限らないかもですが、より個性的で無難な曲を捨てた、という印象でした。

こういった、刺激とそれまでの自己を破壊するかのような作品は、例えばロックバンドとかそういったジャンルではたまにあって、それがそのアーティストやバンドのキャリアや個性を決定づけることが多く、聴いててゾクゾクする感覚があります。私なら最近はFontaines D.C.やgeeseといったバンドの作品にありました。

でも、それを世界一売れているようなポップグループがやるのは、本当に珍しいことだと思います。そういった作品は万人に受けない可能性も高く、この「ARIRANG」はソーシャルメディアの反応でも、「期待と違った」「K-POPじゃない」というような反応もみかけました。この先鋭的にもなっている曲のアレンジや加工、歌詞に韓国語が少ないことも要因のようです。

このような様々な受け取られ方、絶賛だけではない様子は、おそらくBTS側も承知でリリースしたのではないかと思います。こういう稀な作品は、先にも書いたとおり誰にでも愛されるというようなスタイルではありません。

なぜここまで攻めたのか?「ARIRANG」の凄さとオススメしたい人

近年の音楽チャートのトレンドは、サブリナ・カーペンターやオリヴィア・ディーンが上位にいるように、人当たりや耳馴染みの良いいわゆる「グッドミュージック」が人気。BTSも「Dynamite」や「Butter」といった英語曲でそれをやってきて、見事にビルボードなどでチャートの1位を獲得してきました。なので、また同じ方法で安定したチャートの1位を狙って、上位にずっといようとすることもできたわけです。

でも、彼らは大事なキャリア復帰作で敢えてそれを選択せずに、自分達の音楽的ルーツとやりたかった衝動を極限まで表現する方向に踏み切りました。その振り切り方や思い切りが凄い作品に仕上がりましたね!それは私には「反骨精神」にすら感じます。パンクですね。先にアルバムレビューを書いたハリー・スタイルズには、新しいスタイルへの思い切りが少し足りない気がしましたが、BTSはこちらが驚くくらいの振り切りぶりでまさに真逆でびっくりでした!!

「ルーツがパンク」は万人に愛されは正直しにくいかもしれませんが、ハマる人、刺さる人には超強力なものとなりますし、物の見方や感じ方さえ変えます。この作品は、意外と新しいファン層を広げる1作になるかもしれません。もともと音楽評価も高いBTSですが、今作はRolling StoneやConsequence of Sound、Clashといった音楽批評媒体からは高い評価を得ています。「K-POPファンだけではなく、音楽好きも本当に無視できなくなったグループになった」と改めて思いました!今作は普段K-POPとは縁が薄い音楽ファンにも聴いてみて、自由に感じてほしい1作だと思います。

トップなのにアウトサイダー 「ARIRANG」で見えたBTSの本質と今後は

K-POPの世界的人気を決定づけ、作品をリリースすれば世界のチャートで軒並み1位を獲得し、ワールドツアーも毎回大成功。K-POP界だけでなく、世界的な音楽マーケットの中でも「頂点の一角」に当たり前のように存在するBTS。この「ARIRANG」も、はっきり言ってリリース前からもうトップになるのは分かりきっている状態でした。

それでもこのアルバムを聴くと、彼らは自分たちを「トップ」や「王者」と認識はしているけど、心からは決してそう思っていないというか、どこまでもアウトサイダー感が凄くあって、こちら側が「大丈夫か!?」と思わせられるような(笑)。今作に限らず、以前の作品からもずーっとその感覚が続いていて、この「ARIRANG」で「ああ、もうこれはBTSの気質なんだな」と理解することができたように感じました。特に今作はその思いが作品にダダ漏れているように感じます。

なので、本気で音楽に向き合おうとすればするほど、その気質が強くなってしまうのかもしれません。

今作は本当に珍しい作品なので、この作品のスタイルをずっと続けるかは分かりませんが、今年一番強さを持つ作品の一つなのは間違いありませんし、私は彼らの今後がさらに楽しみになるアルバムでした!

BTSが「その客層をもっと広げていきたい」と本気で考えるなら、絶対に欠かせないのはフェスなどの出演で音楽ファンにライブを観てもらう事だと思うのですが、今やARMYですらライブのチケットを獲得するのが本当に難しいようなので、なかなか実現は難しそうですね。サプライズ以外にあり得ないかと思います。

今作をじっくり楽しみながら、彼らの今後を楽しみに考えていきたいと思います♪

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