先月、このドラマを観終わりました。
「Succession」(原題)
「キング・オブ・メディア」
「メディア王 ~華麗なる一族~」(邦題)
あらすじなどはこちら

冗談のように邦題が3バージョンあって(今は「メディア王」に統一されたらしい)、まるでそれ自体がドラマの様子を表しているかのようですが(笑)。
アメリカの人気ケーブル局HBOで2018年から2023年まで全4シーズン放送されたドラマです。
このドラマ、シーズン1から評価が高くて、エミー賞をはじめとしたドラマ系のアワードでよく見かけていたんです。それが
ついに今年(っていうか昨年)のエミー賞にいたっては、「どんだけノミネートすんの!?」ってくらいの好評ぶり。もちろんドラマ部門の作品賞も受賞。
全シーズンに渡って高評価が続いているのも凄いのですが、「シーズンが進むたびにノミネート者が増える」という事態で、ラストシーズンの評判の凄さは観てない者からすると異様に見えるくらいでした(笑)。
ここまで凄いとやっぱり海外ドラマ好きとしては「ほっておけない!」というか、単純にどんどん気になってきてたので、
「U-NEXT1ヶ月無料期間パワー!」を使って全シーズン観てみることにしました。で、結論1ヶ月じゃ観終わらなくて、翌月課金することになっちゃったんですけど(笑)。
でも確かに
面白かったー!!
と終わった後、素直に思いました。正直、そんなに好きなタイプの作品ではないのですが、タイトルにも書いたように、出演者のとんでもない演技合戦が観れた、確かに「現代のドラマの最高峰作品の一つかも」と思わせるパワーのあるドラマでした。
というわけで、私なりに感想を書いてみたいと思います。
※ここから先は思いっきりネタバレしてますので、結末や詳細を知りたくない方はご注意ください。
上にも書いたのですが、普段はもうちょっと元気になりそうというか(笑)、そういう作品が好きなので、この「サクセッション」はあんまり選ばないタイプのドラマではあるんですけど、それでもこのドラマは本当に面白いし、評価が高いのがとても分かる作品だと実際に観てみてよくわかりました。とはいえ、
観ている間はストレスが溜まった(笑)
作品がつまんないとかでは全然なくて、描かれることが私には非常にストレスフルな作品でして。あらすじにもありますが、話としては
この一代で「メディア王」となりウェイスター・ロイコという大企業を作り上げたローガン・ロイが老いてきて病に倒れ、そろそろ後を継がせることを考えなければならない。そこで自分の子供たち、この三人のうち誰に継がせるか、その攻防を描いていくドラマで、大枠自体は凄くシンプルな話なのですが。ローガン・ロイ、この人物にはモデルがいて、

アメリカのメディア王と呼ばれるルパート・マードック。アメリカのメディアの一翼を担うFOX社を一躍大企業にした経営者です。昨年ついに引退宣言をしたそうですが、なんと現在94歳。現実は長男が後を引き継ぐようですね。
で、このローガンが、本当に個人的にもう
このクソ親父がー!!!
って感じでイヤだったんですよ~。
これはもちろんドラマに完全にのせられてるんですけど(笑)。たぶんそれが醍醐味のドラマだし、ローガンに限らずこのドラマは「絶対に善人を最小限しか出さない」と決めているかのように、キャラクターほぼ全員がクセがあって良い人がいないんだけど。
やっぱり、その中でもローガンは突き抜けて嫌な人間じゃなきゃいけないんで、めっちゃ嫌なんですよー。それぐらいでなければ、こんな「アメリカで大企業を築き上げられない」と言われればそれまでなんですが。
で、ドラマでは子供時代のエピソードとしてしっかりとは描かないとはいえ、やっぱり子供たちに対しては幼少期から非常に厳しい視線を送る父親で、もう私はシーズン1からはっきりそう思ったけど、「精神的な虐待を子供たちにしてきたんだろう」と。
それが1話からずーっと続いているんで、観ていてもうイラっというか、ストレスが溜まってキツかったです。まあ、ローガン本人も厳しい育ち方をしているような感じもあり、ギリギリのところまでそう描かないと三人の子供たちの、これまた醜い後継者争いの凄みと可笑しみを描けないから、ドラマの肝であるローガン役を演じたブライアン・コックスは見事だったと思います。でも、
やっぱりこのケンダル、ローマン、シヴの子供たち三人の演技がそれぞれ
めちゃくちゃ凄かった!!
特に一番見応えがあったのがシーズン4なので、「そりゃ評価が高いわけだ」ととても納得しました。もちろんシーズン1から感触がいい感じはあって、
シーズン1はこのジェレミー・ストロング演じる次男のケンダルが中心的な脚本ではあるのですが(全シーズン通して怖いぐらい役に成りきっていた)、それに負けないくらい
キーラン・カルキン演じる三男のローマン(キャラ的にも演技的にもシーズン3でたぶん覚醒)と
紅一点のシヴを演じるサラ・スヌーク(彼女もシーズン1から安定してめっちゃ演技上手い)が、多分思ってた以上に演技の相性が良くて、当初想定していたよりもっと比重が上がったんではないのかな、と。
ケンダルがシーズン2の終わりで、やっと首根っこつかまれてた親父の扱いと尻ぬぐいに我慢ならずに、生贄になるはずだった記者会見で反旗を翻す瞬間は「やったー!ケンダルー!」ってすっきりしたのですが、その後は容赦ない怒涛の演技合戦の展開がどんどんハイレベルになっていって、シーズン4はもう1ミリも見逃せないみたいなシーズンでした。
この継承話には全く関係のない長男コナーまで、最後にはいい演技しなければならなくなった(笑)。いや、最初から上手いんですけどね。
それくらい、もう演技ハイレベル合戦で、それだけキャラクターへの思い入れがそれぞれ役者的にも作り手的にも強かったんじゃないでしょうか。個人的には
私は三男のローマンを演じるキーラン・カルキンが、どんどん凄みを増していい演技をしていくのが観ていてとても嬉しかったです。このドラマをちゃんと観ようと思ったきっかけも彼が今年のエミー賞で最優秀主演男優賞を受賞していたからです。カルキンっていったら子役兄弟で、あの兄マコーレーがセットで浮かんでしまうような感じですが、キーランって
映画「スコット・ピルグリム」にも出ていたり、「17歳の処方箋」って映画があって、これも結構好きな映画で。そして小ネタではエマ・ストーンの元カレという歴史もあり(笑)、映画に出てくると好きな役者だったのですが、まさかエミー賞を受賞するような演技をするようになるなんて。本当に「何があるか分からないな」ととても嬉しい驚きでした。そして、実際「サクセッション」を観て、ホームラン級のとってもいい演技だったので大満足でした!
そんな彼は、この「a real pain」という映画がサンダンスで好評だったようで、これも楽しみにしています!しかも共演は監督と脚本も務めたジェジー・アイゼンバーグ!
脇を固めるキャラクターも演技がまた冴えてて、シヴの夫であるトムを演じたマシュー・マクファディン(いろいろ一番美味しい役だったと思う)と、ローガンの兄(死ぬほど仲が悪い)の孫グレッグを演じたニコラス・ブラウンは「今後いろんな作品にひっぱりダコではないかな」と思いました。マシュー・マクファディンの方は
エミー賞でも連続して助演男優賞を受賞していましたね。確かに絶妙な演技でした。主要キャラではあるけど三兄弟ではないので、よりのびのびと演技できたのかもしれせん。(後から気づいたんだけど、映画「プライドと偏見」のダーシー役!)
シリアスなだけではなく、巧妙に笑える要素のあるキャラを演じられる俳優は重宝されますよね。
この古参経営陣を演じたそれぞれの方も、最初から皆喰えない感じで描き方は面白いんですけど、主要キャラとの相乗効果で、あれよあれよという間に誰が欠けてもいけないくらい大事なキャラになってしまったという(笑)。
それがとても自然なんですけど、「最初はここまで重要になる感じじゃなかったのではないか」と思いました。
私はこのドラマ、観る前はそのとんでもない父親と子供たちの後継ぎドタバタをブラック的な可笑しみをもって描くような、「もうちょっと笑えるようなドラマなのかな」と思っていたのです。で、そういう要素も確かにあったのですが(シーズン3では爆笑エピソードがあった)、シーズン2からどんどんと継承と経営の攻防話が演技とともに面白くなっていったので、そちら側に傾いていったような内容に変わっていったような印象でした。方向を変えたような。自然と変わっていったのかもしれないですが。
それにはやっぱり役者のキャラクターのつかみ方と演技力もあったような気がします。一人二人がいいんじゃなくて、出演者が全員いいので。
だから、もともと1話1シュチュエーション(パーティーとか、会議とか、会合とか、食事会とか)で描かれがちなドラマだったんですけど、エピソード4では(シーズン1とは様子が違う)誕生日パーティー、結婚式、新興富豪に呼ばれる海外合宿、選挙番組、そして、、、。といったように、その描き方もどんどんと際立っていって、演じる方も撮る方も「大変だっただろうな」と思いました。観る方も気持ちが大変なんですけど(笑)。
だからちょっと演劇っぽいところもあるのかな。この中から主要エピソードを切りとって舞台でもできそう。
このドラマの撮り方は私がちょっと苦手なドキュメンタリー風のカメラワークで、シーズン1の最初の方は慣れなくてきつかったけど、途中から慣れたのか、他から苦情が出て抑え気味になったのか(笑)、だいぶ観やすくなってありがたかったです。
逆から言うと、「ちょっと演技的に合わなそう」というか、そういうキャラは外れていくような感じで、その典型がローガンの後妻のマーシャ。
倒れた後に様子がおかしいローガンをシーズン1ではまるで操っているかのような重要な役だったのに、シーズン2からは全然影が薄くなってたり。そういうところはドラマの内容と同じで非情だったかもしれないですね。
話については、個人的なポイントとして、継承話よりもやっぱり私は子供たちの「愛されたいのに愛されない」という哀れみが根底にずっと続いていて。
一人一人を語るととても長くなってしまうのでアレですが、強い言葉で言うと「精神的虐待の被害者」なんですけど、多かれ少なかれ、こういう家や親に生まれた人たちはこうなりがちかもしれないです。
それだけ、厳しい育てられ方をする可能性も高いですし。
シヴなんてそれに加えて女性というだけで、一番有能なのに生まれた時から疎外されてきたので、人一倍性格が悪く、執着も強い。とても優秀な女性だけに、かえってそれが辛くなりますね。
というわけで、あんまりまとまった感想は書けませんでしたが、とても見応えあるドラマでした!
気になった方はぜひ観てみてください♪
おまけ
私は途中までシヴが「愛の不時着」のセリと重なって。でも、話が進むにつれてあまりにシヴが性格悪いんで、大丈夫になりましたが(笑)
おまけ2
お気に入り脇キャラもそれぞれ違うと思うのですが、私はジェリーやカロリナといった強かな仕事女性キャラが好きでした。ケンダルとずっと一緒で最後に辞めるジェスも好きだったな。
おまけ3
次は韓国の財閥にいってみよー!(笑)
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